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溺れたゲンゴロウの救急救命法

何とも変なタイトルですが、笑っちゃあいけません。
本当にゲンゴロウはよく溺れます(・・・でもやっぱりおかしいよね)

といっても、溺れるのは殆どが羽化して間もない個体なんですけどね。
体がまだ軟らかいし、耐水・耐圧構造が不完全なんでしょうね。
我が家でも羽化後、一応体が固まって自力で蛹室から這い出して来た成虫が
水に入って数時間から数日後に
いきなり溺れて土左衛門化する、ということがままあります。
発見が遅れた場合は勿論溺死ということになりますが、
溺れてから数十分〜数時間の場合、そこそこの割合で救命できます。
ひょっとして・・・いや多分世界で初めて!?その方法をご紹介します。
(しかし、一体これがどのくらいの人に役立つ情報なんだろうか・・・笑)

救命率は体がまだ硬直している状態での発見なら60〜80%、
硬直がとけてしまってからでは20%程度・・・バカにならないでしょ!
では写真に従って進めて参ります。
Kyuumei1
上の写真が溺れてしまったご本人、マルコガタノゲンゴロウのオスです。
発見が早かったのでまだピンピンに硬直しています。
まずやる事は水から出して軽く流水で洗います。水道水で構いません。
油膜や小さなゴミを落とすためです。
細かく書くとこれにもいくつかコツがあるのですが、
とりあえず頭からお尻へ、という方向でやや緩く流して洗って下さい。
以降も全て同じですが、持ち方は力を入れずに
体の上下を親指と人差し指で軽くはさみます。
決して左右からはさんで持たない事!壊れちゃいます!!

次にティッシュペーパーで水分を拭き取ります。頭部の下面や尾端、
頭部・胸部・鞘翅の境目は特に念入りに、吸い取って下さい。

Kyuumei2345

いよいよエアタンクの水抜きです(写真左上)
仰向けに寝かせたゲンゴロウの頭の方を少し高くして、
腹端をティッシュペーパーに付けると、
翅と腹部背面の間にあるエアタンク内に侵入した水が吸い出されて来ます。
様子を見ながら完全に滲み出すまでやってください。
量が多い場合はティッシュペーパーの位置を替えて継続します。
ごく初期の場合、これだけで蘇生することも多いです。

上手く水が出ない場合は、腹端を少しめくって隙間を作り
ティッシュペーパーの角をこよりにしてそーっと差し込みます(写真右上)
ただし、挿入の深さは腹節(後脚の付け根)までに留める事!
これより先は新成虫ではまだ軟らかいので、
ティッシュのこよりでも簡単に傷がつきます。

これで様子を見て20分ほど経っても蘇生が全く感じられないようなら、
腹端をわずかにめくった隙間からフッと軽く息を吹き込みます(写真左下)
そうすると、元々撥水効果のある腹部背面に残った水がはじき出されます。
決して広げた口を近づけ「ハァーッ」とかやらない様に!
あなたの温か〜い二酸化炭素を送り込んでもしょうがないので(笑)

どうしてもダメなら心臓マッサージ(写真右下)いやホントだってば!
正確には心臓ではないのですが、後胸腹面を指先で呼吸のタイミングで
リズムをつけてごく弱く押します。この力加減は大変難しいのですが、
押した時に頭部が僅かにクッと動く程度がいいようです。
冗談みたいですが、これで気が付く事がままあるのですよ。
しかし最後のコレは、本当に微妙な作業です。

蘇生の兆候には個体差があります。
脚から動き出すものも、口ひげから動き出すものもあります。
でも、蘇生の兆候が見られたら殆どの場合復帰します。
ちなみに、このような方法ですから、大型種にしか通用しません。
シマゲンゴロウの様な中型種では、写真左上までの作業が限界でしょう。
でも何より大切なのは、羽化後間もない個体では充分すぎるくらいに
上陸場所を設ける事。彼等は水陸を行き来して慣らし運転しています。
私の飼育経験では、この手の溺死、マルコガタノゲンゴロウに
多く見られます。コガタノゲンゴロウでもたまにありますが、
ナミゲンでは殆ど起きません。
どうしてなのでしょう・・・ちょっと不思議です。

※この記事は私見に基づいて編集しておりますので、一切の責任は負いかねます。
 ご了承くださいませ(笑)

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栽培と飼育」カテゴリの記事

コメント

こっちにも失礼します。
博物館ジュニア学芸員の先輩に水生昆虫の好きな人がいて、ゲンゴロウの大ファンのようです。このブログを読んだら喜ぶと思いますが、話せるような性格でないので、連絡先がわかりません。今度会ったら教えてもいいですか?
先生はさいたま水族館を知っていますか?
羽生市にある川の生き物専門の小さな水族館です。ここでは水生昆虫も展示してあって以前質問したことがありますが、絶対に先生の方が詳しいです。
今、うちではタイコウチとミズカマキリを飼育しています。ゲンゴロウも飼育したいです。
追伸
以前、阪神タイガースに源五郎丸洋というピッチャーがいたそうです。活躍出来なかったらしいです

投稿: かぶと小僧 | 2009年9月18日 (金) 22時38分

こっちにもコメントありがとうございます!
タイコウチとミズカマキリを飼育しているのですか。
どっちも生き餌しか食べないので大変でしょう。
ゲンゴロウも幼虫は生き餌しか興味を示してくれません。
しかも大変な大食漢で、蛹になるまではとっても手間が掛かるんですよ。
羽化してしまえば、煮干しでもお刺身でも食べてくれる
手のかからないいい子になりますけどね(笑)

ブログはぜひお友達にもご紹介ください。
でも、いろんな事を書いているので、水生昆虫ネタは
ほんの僅かです。なのであんまり参考にはならないかも・・・

「源五郎丸 洋」ですよね。何となく覚えています。
けがのせいであまり活躍できなかったようですが、
球はかなり早かったみたいですね。
それにしても、珍しい苗字ですよねー。

投稿: ぐりお | 2009年9月19日 (土) 16時55分

 いや~、何度読み返しても、面白く、為になります!(いや、ほんと)
と言っても、水生昆虫飼ってるわけじゃないので、実践することは
まずないと思いますけど・・・そうなんだ~、ゲンゴロウも溺れるんだ~・・・って。
マルコガタノゲンゴロウの見事な土左衛門振りがまた、天晴れ。
って、演技じゃないですからね~、ほんと、間一髪でしたね。
我が家ではよくアツブタガイが飼育ケース内の水皿で溺れるんです。
今度デムの救命救急を試みてみますね。
それにしても、羽化後間もないゲンゴロウって、体の内部まで透けて見えるんですね~。ほんと、まじまじと見ちゃいました。

投稿: くわでん | 2009年9月19日 (土) 22時40分

くわでんさんどうも!
タメになって何よりです(爆)
じつは私がこの救命法を会得したのは小学生の時で、
そのころはゲンゴロウではなく、クワガタでした。
住んでいた岩手ではまだ傘型街路灯の下に水を張るタイプの
誘蛾灯が現役で、これにハマったクワガタを助けたのがきっかけでした。
でも、クワガタだとオスはなかなか助からなくて、
メスはいい確率で蘇生しましたね〜。メスは強し!(笑)

デムの救命レポートは興味がありますが、
勿論それ以前に溺れません様に・・・(笑)

ゲンゴロウですが、透けて見えるのは羽化直後だからではなくて、
ああいうものなんですよ。特にナミゲンとマルコは・・・
オールのような脚を動かすきれいな筋肉がエビの身のようにみっちり入っていて、
美味しそう・・・?!でもって、これは実際に食用になります。知ってました?

投稿: ぐりお | 2009年9月19日 (土) 23時53分

先生、こんばんは。
いつもありがとうございます。次にジュニア学芸員の先輩に会ったらメモを渡しておきます。ブログを読んだらおそらく感激すると思います。今日、水元公園でエビをたくさん捕ってきたので、ウナギ、タイコウチ、ミズカマキリにあげました。
その時に2㎝弱のブルーギルも捕れました。飼育することにします。
僕がタイコウチを大好きなのは、姿が面白いのと2年前に先生からタイコウチの切り紙(?)を頂いた事も理由の1つです。
あの完璧な紙のタイコウチ、大切に保管して宝物にしています。

投稿: | 2009年9月20日 (日) 22時10分

 あ、そうなんですか~。羽化直後でなくてもスケルトン。
知らなかったです~。また一つ賢くなってしまった。
あとは実物を見るだけだな!(^^;)
 もしかして、ゲンゴロウスナックって、塩振って炒ってあるヤツですか?
でもって、翅だけペッペッて吐き出すって・・・。
どっかのアジアの国ではごく普通にスナック感覚、ポテチ感覚で
食べてるってTVで見た記憶があるんですが。あれは蝉だったかな~?
昆虫食って・・・ちょっとかなり抵抗が。蛙・ザリガニは平気なくせにね。
なんか口ざわりが悪そうなんですもん。
ぐりおサンは無論食されてるんですよね?噂に聞く蜂の子みたいに香ばしいんでしょうか。

投稿: くわでん | 2009年9月20日 (日) 22時11分

>かぶと小僧さん
私が作った切り紙のタイコウチを大切に持っていて下さったとは
感激です!今度また機会があったら、
調子に乗ってタガメやミズカマキリも作ってみますね(笑)
タイコウチもミズカマキリも針の様に細長い呼吸管を持っていますが、
基本的な体の姿勢・・・つまり得意なポーズも違うんですよ。ご存知でした?
ミズカマキリはより深い水深に適応していて、細い抽水植物の枯れ葉にまぎれ、
体をタテにするのが得意なのに対し、タイコウチは浅い水中の泥底に
体を潜らせ、呼吸管は上向きに折る様に立てるのが得意。
だからタイコウチは水深をやや浅くした方がいいですよ。
2種類の体の形も、片方は枯れた茎への擬態、片方は泥底に身を潜らせやすい
平べったい体型ということですね。

>くわでんさん
ゲンゴロウはかつて東北地方では常食していたところがあります。
7〜8年前に岩手県北上市で年配の方々に取材したのですが、
塩ゆでにして食べていたそうです。ただお腹と頭の方は苦くて
いがらっぽさも強いので、やはりあの筋肉の部分が美味しいとの事、
で、じつは一度だけ茹でてもらって食べました。余計なところを丁寧に
取り除いて食べたのですが、苦味は残っていました。
しかし、美味い筋肉を食べているという食感はちゃんとあり、
もっと丁寧に調理し、美味しいところだけを食べる事が出来れば
ちょっとエビに似ていて絶対に上品な味になる食材です。
でも、その場で1匹以上食べるのは無理でした(笑)
こしらえてくださったおじさん2名は、翅の下に親指を突っ込み、
下に折るように翅ごと頭をむしって、むき身になった美味しいところを
下の歯で器用にこそいで、苦いお腹と殻を残し、実に上手に食べていました。
T橋良一さん、その節はお世話になりました〜!
また稚魚池のゲンゴロウを採集させてくださーい。

投稿: ぐりお | 2009年9月20日 (日) 22時58分

先生、こんばんは。
いつもありがとうございます。機会があったらミズカマキリとタガメの切り紙もお願いします。厚かましくてごめんなさい。ちなみに妹はコオロギの切り紙を頂きました。妹も大切にしています。

投稿: かぶと小僧 | 2009年9月21日 (月) 21時47分

ミズカマキリとタガメのリクエスト、承りました(笑)
コオロギといえば、今年はやたらと家の中に入り込んで鳴いています。
とても美しい声なのですが、さすがに夜通し鳴かれると・・・

夜、二階の仕事部屋の灯りをつけると
窓にアオマツムシがやって来ます。
鳴く虫にしてはやや強い走光性があるんですね。
でも、灯りにやって来た時の彼等は決して鳴いてくれません。

投稿: ぐりお | 2009年9月22日 (火) 19時00分

はじめまして、ゲンゴロウ記事に感動してコメント書かせてもらいました。
神奈川県、横浜市在住のものです。
ゲンゴロウが溺れるとは知りませんでした。私は残念ながら自然の中でナミゲンゴロウを見たことがないのですが、子供の頃から大好きな虫であこがれに近い気持ちを持っています。救済方法を子供の時に見つけたなんて、本当にすばらしいですね。生物図鑑には絶対載ってないです。大変勉強になりました!また寄らせてもらいます。

投稿: になっち | 2009年11月16日 (月) 14時59分

になっちさんはじめまして&ようこそ!
ゲンゴロウは、羽化して日の浅い個体と老齢個体がよく溺れるんですよー。
多分、捕食や事故に遭わなかったゲンゴロウの自然死の形って
殆ど溺死なんじゃないか・・・と想像します。

自然の中を泳ぐナミゲンは、なかなか見ることが出来なくなりましたよね。
私の住む茨城県でも、県北部のごく一部に少数が見られる程度です。
私は自分で捕まえた初めての甲虫が、たぶんナミゲンです。
当時岩手県の宮古というところに住んでいたのですが、
いつも遊んでいたため池に、うじゃうじゃではないですが
行けばいつも1〜2匹採れるくらいはいました。
だから、ナミゲンはその頃からの古い友達みたいなもんです。
東北だと今でもたくさん見られるところが残っているようですね。
いつまでもいて欲しいなああ・・・

また是非遊びにいらして下さいね!お待ちしています。

投稿: ぐりお | 2009年11月16日 (月) 18時52分

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