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蛹室の壁に思うこと

Schenk091017

さすがにここまで秋が深くなると、
クワガタムシの仲間も庭からは姿を消しました。
クヌギの樹液はまだ出ているのですが、今やって来るのはスズメバチと
ショウジョウバエ、ルリタテハぐらいのもので、
夏の賑やかさが懐かしいほどです。

しかし、飼育しているクワガタ虫の中には
あまり日本の四季と関係なく成長しているものも多く、
シェンクリングオオクワガタはメスが全て成虫になっているのに、
オスは早いものが成虫になっていますが
一方ではまだ幼虫がいたり、蛹だったりしています。
写真のシェンクリングは今蛹になる直前の前蛹。
こうなってからかれこれ6日目、明日あたり蛹になりそうです。
丸々大きく育った幼虫も、この前蛹期には脱水した様に表面にしわがより、
ぎゅううっと縮んで小さくなります。
一緒に写っているスケールは
手前に貼付けているのであまりあてになりませんが、
現在の体長はだいたい78ミリくらい。
シェンクにしてはちょっと小振りでしょうか。

注目は蛹になるために幼虫が作ったこの空洞・・・
これを蛹室といいますが、その壁の部分です。
一番内側が薄く焦げ茶色の層になっていますね。
これは幼虫がぐりぐりとうねるようにして佐官工事をやって作った内壁で、
じつに滑らかで安定しています。
実際に固くて、羽化後に崩してみると形が残るほどしっかりしていて
まるで樹脂でも染み込ませて固めたようです。
ものの本には「唾液」と書いてありましたが、確かに幼虫が口から出した
消化液で、元々きのこの「菌糸おが」だったものを変質させたようです。

その内壁のすぐ外側は、キャラメル色をしていますが、
これがその消化液らしいものが滲み出して、
おがが変質し始めたときの色です。この層はキノコの菌糸やカビを
シャットアウトする働きがあるようで、蛹室の崩壊や菌の侵入を
防ぐ役割の様に見えます。

そのさらに外側は菌糸のおがが幼虫にかく乱されて発酵マットの様に
黒変した部分で、最後まで直接幼虫のエサになっていたところです。
この子は菌糸のおがをかき回して黒く変質させてから食べるクセがあって、
この辺は同じ種類のクワガタでも色々と個性があるようですよ。
菌糸おがを落ち着いて丁寧に食べ進むタイプの幼虫だと
この部分はまだ生きた菌糸で白くなっている場合もあります。

そもそもクワガタが食べた菌糸おがを消化するためには
体内に共生しているバクテリアの関与が書かせないようで、
シロアリやキクイムシなど、他の多くの材食性の昆虫でも
色々な共生バクテリアの存在が知られています。
蛹室の壁を安定させるという消化液にも、当然こうしたバクテリア、
あるいはその生成物である酵素などが関係している可能性があるはずで、
こういう現象を見ていると、生分解性プラスチックなど、
未来の材質につながる大事なヒントがあるんじゃないかと思えてしまいます。
新薬や新素材など、森にはまだまだ
私たちが知らない宝物が眠っているような気がしてなりません。

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栽培と飼育」カテゴリの記事

コメント

 こんばんは。
あれからどうなったのかな~ってずっと思ってたんですが、
やっとシェンク登場で嬉しいくわでんです。
 女の子をずっと待たせてるなんて、不思議ですね。
蜂なんかだと、雌の羽化を雄が待ち構えているというのに。
女の子には待ち時間を使ってたっぷり食べといてねって事なんでしょうか。
 それにしては、女の子の扱いが手荒ですよね。
飼育してた大王ヒラタではDVが大発生、気づいて途中で止めに入ったら
指を挟まれて、小さな昆虫の顎の力の凄さに気絶しそうになりました(^^;)
夫婦喧嘩は犬も食わないって言いますが、ほんとですね~。
 土壌動物とバクテリアの関係にも関心があるので、
今夜のぐりおさんのお話、とても勉強になりました。
デムにも消化のためのバクテリアが共生しているんじゃないのかな~、とか。
 カブトムシの幼虫から抗菌性ペプチドを抽出して
抗癌剤を作る研究が進められているとかって聞いた事があります。
ほんとに、自然っていろんな秘密を隠し持ってるんですね。

投稿: くわでん | 2009年10月18日 (日) 22時54分

くわでんさんこんばんは!
最初に羽化したシェンクのオスは、もう3ヶ月過ぎようかというのに
まだ蛹室から出ようとしません。でも私は自力脱出主義なので、
決して掘り出さずに辛抱強く待っています(笑)
80ミリ以上はありそうですよ。
そして先日アップしたこの前蛹も、今日無事に蛹化しました。
こちらはやはりちょい小振り。75〜77ぐらいかな?

同じ親から産まれた幼虫が羽化する時期に性差が生じるのは
やっぱり同系列での交配を避けるためなんでしょうね。
特に熱帯・亜熱帯圏の種類はいつ羽化しても相手に困らないので
この傾向が強い様に感じます。
夏しか繁殖できない日本のクワガタは、さほど大きくずれないようですね。

蛹室の壁の秘密、凄いと思いません?
おがなんてほとんどセルロースですから、それを分解・変質させて
強固な壁にするとは・・・これは使えそうな気がするんですよねー

投稿: ぐりお | 2009年10月18日 (日) 23時50分

先生、こんばんは。
いつもありがとうございます。秋の新人戦、中間テスト、イベント多数でしばらく来れませんでした。
シェンクリング楽しみですね。僕は羽化したらすぐに掘り出してしまう派です。待ちきれません。だからなかなか交尾行動してくれなくて時間がかかります。今、オオクワの新成虫を2ペア飼育しています。2年目のもいます。こちらは産卵期待していますが、11月になったらケースをひっくり返すつもりです。
蛹室は本当にすごくしっかりしていますよね。
カブトムシ、クワガタも蛹室を作りますが、カナブン、ハナムグリのようなカチカチではないです。今年はカナブンの幼虫を50匹ほどふ化させたので、観察会の仲間たちに見せてあげる事になっています。幼虫の時は背中で歩き、蛹はまゆの中にいる。面白い習性だと思います。

10月にもアカアシクワガタがいるとあったので採集に行きたかったのですが、今年は忙しくて時間がありませんでした。まだいますか?

投稿: かぶと小僧 | 2009年10月19日 (月) 22時32分

かぶと小僧さんこんばんは!
しばらく見えないと思っていましたがそういう事でしたか。
相変わらず充実していますね。

カナブンがふ化したのですか。すごいですね!いいな〜
じつは私は日本の甲虫の中で一番美しいと思っているのが
アオカナブンなんですよ。
いつかアオカナブンを繁殖飼育してみたいです。
クロハナムグリ、コアオハナムグリ、シロテンハナムグリ、
クロカナブンの4種ではやったことあるんですけどね。
アオカナブンでは未だ産卵にも成功していません。

アカアシはまだ少しはいると思うけど、
さすがに10月も下旬になるとちと厳しいかな〜
この時期はヤナギ地帯の、しかも日中活動ということになるでしょうね。
標高が高い裏磐梯などではもう無理ですが、
那須山麓や塩原の下の方の河川沿いなど
少し低いところだとまだいるかもしれません。

投稿: ぐりお | 2009年10月20日 (火) 01時33分

こんばんは。
いつもありがとうございます。僕もアオカナブンの緑色がタマムシと並んで1番だと思います。クロカナブンの黒も気に入ってます。昨年、宍塚大池でアオオサムシを見つけたのですが、それもなかなかキレイでした。コガネムシも含めて緑系の昆虫は皆キレイですね。妹がニジイロクワガタを飼育していましたが、本当にキレイでした。

アカアシクワガタの情報ありがとうございました。今年は諦めます。来年は採集したいと思います。

投稿: かぶと小僧 | 2009年10月20日 (火) 21時21分

かぶと小僧さんこんばんは!
うちでも今ニジイロクワガタを飼っていますよ。
同時に飼い始めたのですが、メスは全て羽化し、オスはまだまだ・・・
でも、メスも色は同じですから、美しさは楽しめています。

ニジイロもタマムシも美しいですけど、表面的な金属反射ですよね。
だけどアオカナブンは違います。ホログラムのような立体的な反射というか
吸い込まれそうな不思議な色合いがあって、独特なものを感じるのです。
アオカナブンほどではないですが、アオオサムシやゲンゴロウにも
似た様な構造色的反射を観察出来ます。
外国のカナブンがすっごいですよね。たまに標本を見かけると、
思わずコレクションしたくなっちゃいます(笑)

投稿: ぐりお | 2009年10月20日 (火) 23時38分

僕はカナブンが大好きです。
クワガタの次かもしれません。でもあまり人気がないのはナゼでしょう?形も色もいいのに…カブトムシは毎年たくさん採集しますし、小さい子にあげたりします。産卵 ふ化させた幼虫を博物館カブトムシ総会で配ったりしていますが、カナブンは絶対に自分で飼育します。
アオカナブンのブリードに成功したら先生には特別にプレゼントしますからね。
楽しみにしていて下さい。

投稿: かぶと小僧 | 2009年10月21日 (水) 22時27分

かぶと小僧さん、カナブンファンの同胞がいて嬉しい限りです!
アオカナブンのブリード成功、期待しちゃおうかな・・・(笑)

普通のカナブンの方も、ごく稀に赤や藍色の美しい個体がいますね。
私が子供の頃はカナブンはもっともっとたくさんいた昆虫で、
樹液が出た1本のクヌギに30匹も50匹もふつうにたかっていました。
そんな中には、確かに藍色のカナブンもいたのを憶えています。
いろいろな色がぎっしり並んでいて、
まるで宝石箱のようでした。

投稿: ぐりお | 2009年10月22日 (木) 19時16分

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