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買ってはいけない(中編)

今日は19.5℃まで達し、こりゃあ一気に春が来そうだと思っていたら、
一気に来たのは吹き荒れる南風でした。
風はお昼少し前に本当にいきなり来ました。まだ外はごうごう言っています。

さて昨日の最後に書いた、写真に写っているラベルの件ですが、
お気づきになったでしょうか?
写真をよく見ると、名前が「中国黄花アツモリソウ」となっていますが、
どう見ても黄花じゃないですよね。
これ、ラベルが間違って付けられているんです。
中国黄花アツモリソウと呼ばれている種類は
シプリペディウム・フラブム(Cypripedium fravum)という別種です。
フラブムも一緒に売られていたので、
パッケージングの際の単純なミスでしょう。(あってはいけないことですが)

こういう単純な問題は別として、中国から入って来るアツモリソウの苗には
もっと根本的な問題があります。
それは、殆ど例外無く株がダメージを負っている事。
まず自生地で自由に根を張っている株を素人の採り子が雑に掘り出す際に
長い根が切られて失われます。
そしてまとめて集荷されるまでの輸送で乾燥にあったり
折れ傷擦り傷がついたりしてかなりヨレヨレになります。
それを乱暴に手で束ねてぎゅう詰めにするのでたまったものではありません。
しかし、昨年の秋までに株の栄養は芽に集中しているので、
芽が無事であれば、とりあえず最初の一花を咲かせる事はできます。
球根の水栽培の理屈ですね。まあ大抵そこまでですが・・・
では、今回の株はどうでしょうか?ちょっと根の状態を見てみましょう。

Negasukunai

上の写真をご覧下さい。思った通り、先端までちゃんとついている根が
ただの1本もありません。中にはよじれて折れているものもあります。
今回の株は2本立ちでしたが、ちゃんと同じ1株でした。
悪質なケースだと細切れの2株がさも1株の様に
まとめられている事もあります。
根の本数はまあまあです。ひどいものではこの大きさの株に対して
根が10本足らずの事もあります。
写真だと分かりづらいのですが、全ての根が下向きに束ねられた状態で
植えられていました。これは輸送の段階で
根が無理矢理下向きに束ねられるからなのですが、
本来アツモリソウの根は放射状に横に広がるものです。
束ねた下向きの状態を修正せずに植え付けたのでは、この時点でNGです。

ちなみに、健全なアツモリソウの根とはいったいどのようなものでしょうか?
答えの画像が下のサイトにあります。

http://www.minax-bio.co.jp/top.html

トップページのサイドメニューから「温室探検」をクリックし、
スクロールして降りて行き、下から2番目の写真にご注目ください。
これがアツモリソウの根のあるべき姿です。
しかし、今回の株では根とは別に重大な問題が発覚しました。
下の写真をご覧下さい。

Shinmekesson


右の茎が開花している大きい方、左が花の無い小さい方です。
黄色と赤の○の部分は、来年の芽ができている部分です。
あまり知られていませんが、じつはアツモリソウは
今春伸びる芽が出来上がった昨年の秋には、
すでにその次の芽も用意しているんです。
つまり、まだ今年がスタートしたばかりなのに、
現時点でもう来年の動向もある程度決まっている訳です。
ところが右の開花中の茎では、ついているはずの来年の芽が
腐れ落ちています。(赤丸の○)
左の茎の来年の芽も一番外側の鱗片が半分枯れていて、
中身はまだ生きていそうですが、かなり危なっかしい状態です。(黄色の○)
この株、もし生き残ったとしても、来年の開花は既に絶望的です。

私もいくらブログでリポートするのが目的だと言っても
買った以上は一生懸命頑張って栽培するつもりですから、
並んだ中ではましな方の品を選んだはずなのですが、それでもこの有様・・・
こうした中国産のアツモリソウたちは、
まるで枯死するためにはるばる海を越えてやって来た様なものです。
もちろん誰にもそんな意図はないでしょうが、
結果的にはそういう扱われ方をしているという事ですね。

これが栽培生産されたものならまだ仕方が無いと割り切れるのですが、
(いや、それでも命を扱う上での倫理的な問題はありますが)
全部半年前まで野生だった訳ですから・・・本当に悪い事をしています。

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意見がある人〜ハイ、ぐりお君」カテゴリの記事

コメント

ぐりお先生、こんにちは。

大変不謹慎なのですが、義父の話を思い出しました。

ずいぶん昔、お寺さんの参道でお祭りの時に盆栽が売られていて、立派な枝振りを気に入り買い求めたそうです。
しかしすぐに枯れてしまい、残念に思い、根っこを見たら「無かった」そうです。

つまり、切った枝をそのまま鉢に挿しただけだったんですって。

その話を聞いたときは戦後の、昭和の混乱の時代だからこそ、と思ったのですが、このご時世に国を超えて、デタラメなことが行われているんですね。

見えないけれど根は大事ですよね。

ぐりお先生のお宅にたどり着いた株は幸せものです。
長生きできますように。

投稿: mari | 2010年4月 2日 (金) 10時41分

こんばんは〜。

知らない世界(アツモリソウの栽培)のお話ですが、とてもためになりました。興味深く読ませていただきました。ビジネスと自然は、磁石のNとNなのでしょうか?

たぶんビジネスにNとSがあり、自然にもNとSがあるのでしょう。今の世の中は互いに相反する極が向き合っているだけなのかも…。きっとそのうちNとSが向き合うときが来るのかもしれません。そのときに役立つようなことを仕事(生業)にしたいものです。

今、ちょびっとマスデバリアに興味を持っています。先日図書館で「原種ラン図鑑」みたいなのを見ていて、マスデバリアのページに行き着きました。そこで何ページにもわたり掲載されていたのにはビックリ。マスデバリアの原種って何種類もあるんですね〜。どれも魅力的で、自分でも栽培できたらいいなぁ〜なんて夢みたいなことを考えてしまいました。

おっと、話がそれました。前編、中編と読み応えバッチリの記事でした。後編を大いに期待しておりまする。では、そのうちライブで話しましょう。

投稿: mushizuki | 2010年4月 2日 (金) 21時49分

mariさんどうもです!
ありますよね〜、縁日なんかの買い物でもそういうのが・・・
でも、あ、やられた!ってとこで寛大に構えればそれも風情だったりしますが、
アツモリソウの自生地採取による大量流通はシャレになりません。
まるで灯火がひとつずつ消える様に自生地が失われています。

そういえば某産品直販所でも、
「この浅くて小さな鉢にどうやったらシュンランの根がおさまるの?」
みたいな山野草の寄せ植えが売られていました。
「これは毎年咲くから・・・」と、どこかのおばあさんが嬉しそうに
買い求めていたのですが、店先でまさかそれは絶対枯れるとも言えないし・・・
多分がっかりした顔になるおばあさんのことを思うと
あんまり罪なものを並べるなといいたくなりました。

うちに来た中国アツモリ・・・本当に長生きできればいいんですけどね〜

投稿: ぐりお | 2010年4月 3日 (土) 01時27分

あ、mushizukiさんしばらくっす!
磁石のNとNですか、上手い事おっしゃいますね(笑)
でもそれって、持続可能じゃないってことを象徴してますよね。
世界が自然なんだから、自然に逆らって世界が成り立つ訳が無い・・・
それを忘れている人間という生き物は、やはり愚かなのでしょうね。

マスデバリア!
あのですね、少し前に、ジョイフル○田ですっごく安く売られていました。
原種も混ざってたです。
きれいですよねー。

さて、後編はお読みいただけたでしょうか?
実践編です。期待はずれでしたかね(笑)
来週あたり、時間があったらゆっくりお話しましょうね。
筑波山のお花たちは、まだかな〜・・・

投稿: ぐりお | 2010年4月 3日 (土) 01時35分

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